LaTeXで書かれる書類は意外と多いものです。論文の宣誓書のページ、演習問題、カバーレター、学科が.texのテンプレートとして配っている書式。そこへ「印刷して署名し、スキャンしてください」というメールが届き、署名の画像を貼り付けただけでは通らず、手元にはプリンターがなく、スキャナーはなおさらありません。
Look Scannedで.texファイルを直接開けるようになりました。ファイルを選ぶと、ブラウザの中でそのまま組版されます。1ページずつプレビューで確かめ、スキャン効果をかけて、本物のスキャナーを通したようなPDFをダウンロードできます。事前のコンパイル(通常.texファイルをPDFにするための手順)は不要で、TeX LiveやMiKTeXをインストールする必要も、Overleafのアカウントにログインする必要もありません。
逆の使い方もできます。誰かから.texファイルが送られてきて、LaTeXに触れたことがなくても、何もインストールせずに中身を見ることができます。
対応している内容
この機能を支えるエンジンはTeXではありません。LaTeXのすべてではなく、ほとんどの文書が使うコマンドを理解します。
- タイトル部分、概要、目次。
- 番号付きの節と小節、
\refと\eqrefによる相互参照。 - 箇条書き、番号付きリスト、説明リスト。入れ子になったものも含みます。
tabularと\hlineで組んだ表。キャプションと番号も付きます。- インラインと別行立ての数式:
equation、align、gather、multline。数式は専用の数式フォントで組まれるので、普通の文字に記号を混ぜたものではなく、LaTeXの出力らしく見えます。 thebibliographyと\bibitemで書き出した参考文献と、それを指す\cite。\newcommandで定義した自分のマクロ。本文中でも数式中でも使えます。- コードのための
verbatim環境と\verb。
未対応のコマンドがあっても、文書全体が失敗することはありません。そのコマンド名が元あった場所にハイライト表示されます。これはプレビューでもスキャン後のページでも同じなので、生成する前にソースから取り除くか、別のものに置き換えてください。
.texファイルをスキャン風PDFにする手順
- LaTeXをスキャン風PDFに変換を開き、
.texまたは.latexファイルを選びます。 - プレビューを1ページずつ見て、見出し、数式、表を確認します。
- スキャン効果を調整します。小さな文字や数式の多い文書では、ぼかしとノイズを控えめにします。
- スキャン風PDFを生成して、ダウンロードします。
画像のほうが使いやすい場合は、各ページをJPGやPNGで書き出すこともできます。選び方はPDF・JPG・PNGの比較で説明しています。Pro版なら、一括スキャンで複数の.texファイルをまとめて処理できます。
ソースファイルの読み込みと組版は、ブラウザの中で行われます。コンパイルのためにサーバーへアップロードされることはなく、表示中に文書がインターネットから何かを読み込むこともできません。
使う前に知っておきたいこと
この機能はベータ版で、LaTeXはとても大きな言語です。自分でコンパイルしたPDFとは一致しない点がいくつかあります。
- 改ページの位置が違います:ページを組むのはTeXではなくブラウザなので、改行と改ページは別の場所に入り、
\newpageは無視されます。文書はA4用紙に組まれます。 - パッケージは無視されます:
\usepackageの行は読み飛ばされるため、パッケージ由来のコマンドは未知のコマンドとして表示されます。上に挙げたamsmathの環境は使えますが、alignの数式番号は付きません。 - TikZ、BibTeX、TeXのプリミティブには対応していません:TikZやPGFで描いた図は表示されません。
.bibファイルに置いた参考文献は解決されないので、代わりにthebibliographyで項目を書き出してください。\defのような低レベルのTeXには対応していません。 - 別ファイルの図は表示されません:
.texファイルは画像をディスク上のパスで参照しますが、ブラウザはそこに届きません。図のキャプションと番号は表示されますが、画像そのものは出てきません。 - PDFは画像でできています:本物のスキャンと同じく、文字の選択や検索はできません。編集用に
.texのソースは残しておいてください。
レイアウトを正確に一致させる必要がある場合や、文書がパッケージに大きく頼っている場合は、いつもどおりPDFにコンパイルするか、何もインストールしていなければOverleafでコンパイルして、そのPDFにLook Scannedでスキャン効果を加えてください。難しい部分はTeXがすでに済ませているので、この方法ならどんなLaTeX文書でも扱えます。
スキャンしたように見せたい.texファイルがありますか?さっそく試してみてください。